2024年12月2日(月)、本学情報学部の池野英利教授が参画している共同研究により、海岸に生育するクロマツの根系は土壌環境に適応して成長し、樹高が高くなるほど根が深くなることが新たに明らかになりました。本研究成果は、2024年11月27日付で日本森林学会国際誌『Journal of Forest Research』にオンライン公開されました。
概要
国内の海岸には、強風や海塩、津波に対する強さからクロマツが植栽されてきました。根が深いほど樹木は倒れにくく、津波や強風に対する減災機能も向上します。海岸林の減災機能を評価する指標として、根の最大深さを推定することが必要となります。
本研究では、海岸に生育するクロマツ根系を掘り取り、土壌環境と根の最大深さを測定しました。また掘り取り直後のデジタル画像から根系三次元構造の再現を可能としました。その結果、根の最大深さは、土壌環境に適応し、樹高が高くなるほど深くなることを明らかにしました。この結果は国内で掘り取られたクロマツの根の最大深さと樹高との関係性でも確認されました。本結果の応用として、樹高成長の悪いクロマツについて、根を深く誘導する森林管理を行うことで、減災機能の高い海岸林再生への応用が期待されます。
なお、本学池野教授はこの共同研究において、主にデジタル画像から根系三次元構造の再現及び解析を担当しました。
ポイント
・国内の海岸には津波や強風から災害を減じる目的でクロマツが植栽されてきた。
・根系の掘り取りと根系構造の三次元解析から、海岸クロマツの根の最大深さは、樹高が高くなるほど深くなることを明らかにした。
・クロマツの根の深さを樹高から推定することで、根の深いすなわち減災機能の高い海岸林再生への応用が期待される。
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論文情報
雑誌名: Journal of Forest Research
論文タイトル: Intraspecific variation in root system structure in a Pinus thunbergii stand grown in a gravelly spit coast(礫質砂嘴海岸に生育するクロマツ林根系構造の種内変動)
著者:Yasuhiro Hirano1, Chikage Todo1,2, Toko Tanikawa3, Keitaro Yamase2, Mizue Ohashi4, Masako Dannoura5, Yuki Okamoto4, Ryuusei Doi1, Gen Yoshida1, Hidetoshi Ikeno6
(平野恭弘1、藤堂千景1,2、谷川東子3、山瀬敬太郎2、大橋瑞江4、檀浦正子5、岡本祐樹4、土居龍成1、吉田厳1、池野英利6)
1名古屋大学大学院環境学研究科、2兵庫県立農林水産技術総合センター、3名古屋大学大学院生命農学研究科、4兵庫県立大学環境人間学部、5京都大学農学研究科、6福知山公立大学情報学部
DOI: 10.1080/13416979.2024.2431756