2024年11月13日(水)、「地域に役立つIoT研究と実践事例の紹介」と題した第2回市民講座を本学で開催しました。講座には、2024年4月に着任した情報学部・井上一成教授が講師を務め、16名の参加者が集まりました。
講座は、井上教授がシリコンバレーでの半導体研究経験を踏まえたイノベーションについての話から始まり、技術が一定の成熟度に達すると、社会の関心が他の分野へ移ることや、一つの指標にのみ焦点を当て続けると、その技術に対して関心を持つ人が減少するという技術革新の難しさについて説明しました。
続いて、技術革新により、多くの人が簡単に技術を利用できることになった結果、ヒトや地域の個性を喪失させ、大衆化させてしまう側面があることが話されました。その中で、「電卓が使える人は計算を速くできるが、そろばんに価値がなくなったわけではなく、むしろ、そろばんが使える長けた右脳を持っていることは、その人の強みになる」と紹介されました。
また、大衆化自体が善悪の問題ではなく、「誰でも使える」という利点から技術を学んで活用しなければ損であると井上教授からアドバイスがあり、参加者は頷きながら積極的にメモを取っていました。
講義の後半部分では、井上教授が以前兵庫県で実施した、ATMの通話内容を解析を通じた詐欺防止の研究が紹介されました。この技術は、通話内容の解析は比較的安価で実現可能であるものの、顧客の姿や声を記録するというセキュリティの問題や、電源・通信不安の問題など、実装に向けた課題も示されました。
講座を受けた参加者から、「理系的な話だけでなく文系的な観点も取り入れた内容が良かった」「技術が必ずしも高価でないことを知れて良かった」という感想が寄せられました。