2024年10月26日(土)、27日(日)の両日、「第62回医療・病院管理学会」の学術総会が国立保健医療科学院(埼玉県和光市)で開催され、地域経営学部医療福祉経営学科の岡本悦司教授が「地域医療情報連携ネットワークの将来像」と題するシンポジウムに登壇しました。
地域医療情報連携ネットワークとは、地域内の医療機関が患者のカルテを共有し、医療の質の向上を図る仕組みです。これまでに500億円以上の補助金が投入され、全国で400以上の地域ネットワークが構築されているものの、その多くが十分に活用されていない現状が課題となっています。
岡本教授の講演では「マイナポータルを活用したPHR(生涯健康記録)普及と地域医療連携への活用可能性」というテーマが取り上げられました。今年元日に発生した能登半島地震の際、避難者の服薬情報などを地域の医療機関がマイナポータルを通じて迅速に入手できる「災害時医療情報閲覧システム」が初めて発動され、2万2000件の閲覧があった、と岡本教授が口火を切ると、マイナポータルが即時の情報連携ネットワークとして機能したことが驚きをもって受け止められました。
岡本教授は「従来のネットワークは医療機関間の情報共有が主目的であり、患者が自己の医療記録を入手・保持するPHRとは異なります。現在、マイナポータルを通じて自己の医療情報を取得できるようになりつつありますが、マイナポータルはあくまで情報の入手経路に過ぎず、例えば検査データも直近3回分しか閲覧できません。患者が自身の医療記録をスマートフォンやプリントアウトで保存し、活用することこそ、効果的な地域医療連携に結びつくのです」と講演を締めくくりました。