2024年2月16日(金)、国際誌「CATENA※」に情報学部・池野英利教授(情報学部長)が参画する兵庫県立農林水産技術総合センター(森林林業技術センター)と東京大学、名古屋大学、京都大学、兵庫県立大学、福知山公立大学との共同研究プロジェクトに関する論文『Effect of sprouting and corresponding root distribution of the shrub species Eurya japonica on slope stability(低木種ヒサカキの萌芽とそれに伴う根の分布が斜面安定に及ぼす影響)』が掲載されました。
※国際誌「CATENA」とは、地形の発達や景観生態学に関する独創的なフィールド調査などを記述した論文を掲載する学際的な土壌科学ジャーナルです。
研究概要
萌芽能力を持つ樹木は、攪乱を受けた際に複数幹を形成し、地上部重量を短期間で回復させると言われている。一方、幹数により地下部重量や根の広がりが違うことが、樹木根による表層崩壊の防止力に影響を及ぼすのではないかと考えられる。本研究では、ヒサカキの単数幹と複数幹で、根系分布や斜面安定に果たす役割を比較した。その結果、以下のように、幹を間引く伝統的な里山管理の方法を科学的に意義づけることができた。
- 単数幹の集合体である複数幹は、異なる幹とパイプで繋がるお互いの根が、根株中心近くで競争するため、地上部に対して地下部重量が単数幹より減少した。この減少は、斜面の樹木が倒れやすくなることを意味している。さらに複数幹は、根による土壌補強強度が最大に達するまでの移動量が大きくなり、崩壊時のすべり面が形成されやすい傾向にあった。このように、複数幹は単数幹と比較して、表層崩壊に対する抵抗力は低いことがわかった。
- 里山で伝統的に行われてきた“もやかき”、すなわち個体に複数ある幹を間引く作業は、残った幹の直径を太らせることになる。この作業は、長期的に斜面の安定効果を発揮し、表層崩壊に対する抵抗力を高める可能性がある。
(論文情報)
K. Yamase, H. Ikeno, N. Hotta, M. Imawaka, M. Ohashi, T. Tanikawa, C. Todo, M. Dannoura, Y. Hiarno (2024)『Effect of sprouting and corresponding root distribution of the shrub species Eurya japonica on slope stability』, Catena, 238, doi: 10.1016/j.catena.2024.107869