衣川昌宏准教授(情報学部)の研究グループが発表した論文が、環境電磁工学分野においての最高峰学会である IEEE EMC Society (アイ・トリプル・イー イー・エム・シー ソサイエティ(Institute of Electrical and Electronics Engineers, Electromagnetic Compatibility Society))のRichard B. Schulz Best Transactions Paper Awardを受賞しました。
この論文は、2018年から2019年にIEEE Transactions on EMCで発表された300を超える論文の中からトップの論文の一つに選ばれました。
- 学会名
IEEE EMC Society
(アイ・トリプル・イー イー・エム・シー ソサイエティ(Institute of Electrical and Electronics Engineers, Electromagnetic Compatibility Society)) - 受賞
Richard B. Schulz Best Transactions Paper Award - 論文名
Data Injection Attack Against Electronic Devices With Locally Weakened Immunity Using a Hardware Trojan
(日訳: 悪意のある電子部品の挿入によって局所的に電磁感受性を下げられた電子機器に対するデータ注入攻撃) - 受賞者
Shugo Kaji, Masahiro Kinugawa, Daisuke Fujimoto, Yuichi Hayashi
(鍛治秀伍、衣川昌宏、藤本大介、林優一) - 論文の概要
電子機器は強力な電磁波照射(例えば電子レンジの庫内)によって簡単に故障してしまいます。これは、強力な電磁波が電子機器内部に機器を破壊する強い電流や高い電圧を発生させるために生じます。しかしながら、情報通信機器への攻撃を考えた場合には、単純な破壊よりも、電磁波を通じて意図的に誤動作・誤作動を招く命令や操作を注入される方が被害は大きくなります。
そこで本研究では、破壊に至らない強度の電磁波照射でも電子機器の動作に介入できることを示し、さらには意図的に機器を誤動作・誤作動させることが可能であることを指摘しました。また、この攻撃には機器を破壊しない程度の弱い電磁波とハードウェア・トロージャン(電子部品のトロイの木馬。あたかも正常な部品のように振る舞い、外部からの指令、ここでは電磁波、によって悪意のある動作をする部品)を用いることで、機器の動作を支配するような命令の注入が可能であることを示しました。
この問題を解決するためには、食品のトレーサビリティ(生産・流通を追跡できること)と同様に電子機器のサプライチェーンの真正性(部品の製造、製品組み立て、流通の流れが追跡可能であり、その連鎖に攻撃者の介入がないこと)が必要となっています。対抗策としては、電磁波を電子機器に当てた際に生じる反射波に違いを観測することにより、その機器の真正性を確かめる手法があり、利用者へ出荷する前にそのような試験を実施することで、ハードウェア・トロージャンの有無やその他の改変を検出可能となります。 - 関連URL
https://doi.org/10.1109/TEMC.2018.2849105