政府が示すAI戦略2019では「すべての大学・高専生(約50万人/年)が初級レベルの数理・データサイエンス・AIを習得すること」を目標に掲げています。これは、学生の数理・データサイエンス・AIへの関心を高め、かつ、数理・データサイエンス・AIを適切に理解し、それを活用する基礎的な能力を育成することを目的としています。
本学においてもプログラムを以下のとおり構築し、数理・データサイエンス・AIに関する知識及び技術について体系的な教育を行っています。
このプログラムは、2021年8月4日付けで文部科学省の数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル)における認定プログラムとなりました。認定有効期限は2026年3月31日までです。関連する書類をここに公表します。
- 数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)申請書
- 令和3年度自己点検評価(数理・データサイエンス・AI教育プログラム)
- 令和2年度自己点検評価(数理・データサイエンス・AI教育プログラム)
実施体制
2022年度からは以下の体制で実施します。
- プログラムの運営責任者:数理・データサイエンスセンター長 畠中利治
- プログラムを改善・進化させるための体制:数理・データサイエンスセンター
- プログラムの自己点検・評価を行う体制:教務委員会
プログラム対象科目の開講状況
本学では、文部科学省の数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル)の要件に準拠した教育プログラムを提供します。指定科目は、全学共通科目群に含まれ、所属学部に関係なくこのプログラムを履修することが可能です。
プログラムの対象科目は、2020年度以降の入学生に適用したカリキュラムにより開講しています。
地域経営学部では、地域協働型の教育実践としてフィールドワークを積極的に取り組んでおり、調査、データ集計、分析能力を必要とするため本プログラムの履修を積極的に推奨しています。
情報学部では、学生に提示しているすべての履修モデルにおいて本プログラムの科目の履修を推奨しています。また、一部の科目は必修化しています。
科目と修了要件
各学部学科の所定の科目を修得した学生は教育プログラム修了者として認定され、修了証が発行されます。
指定科目
下表に指定した3科目6単位をすべて修得することを修了の条件とします。科目名をクリックするとシラバスが表示されます。
科目名 | 配当学年 | 単位数 |
---|---|---|
データサイエンス入門 | 1年次 | 2単位 |
情報リテラシー*1 | 1年次 | 2単位 |
統計学*2 | 1年次 | 2単位 |
- *1:2023年度までの情報学部入学者は必修科目。
- *2:地域経営学部では「医療統計学」の単位取得をもって読み替えることができる。
オプション科目
下表の科目はプログラムの修了には関係しませんが、今後のより深い学びにつなげるとともに、数理・データサイエンス・AI がカバーする技術領域を地域における課題解決のツールとして活用する素地をつけるため、合わせて修得することが望ましいとしています。
地域経営学部
2024年度以降の科目名 | 2023年度までの科目名 | 配当学年 | 単位数 |
---|---|---|---|
数学基礎 | 数学基礎I | 1年次 | 2単位 |
幾何学入門 | 数学基礎II | 1年次 | 2単位 |
情報学部
2024年度以降の科目名 | 2023年度までの科目名 | 配当学年 | 単位数 |
---|---|---|---|
線形代数I | 線形代数基礎 | 1年次 | 2単位 |
微分積分I | 微分積分基礎 | 1年次 | 2単位 |
身につける能力
- データ駆動型の課題解決法のサイクルが概観でき、今後の地域協働型教育研究の場においてそのサイクルの実践ができる。
- エビデンスに基づいた意思決定の重要性が理解できる。また、その実践に必要となる基本的な統計処理のスキルが実データに対して適用できる。
- データを利活用する上で留意しなければならない法・倫理を理解し、適切な利用法のもとで運用できる。
- 地域の課題の解決に人間中心の判断が必要であることを理解し、AI を不安なく適用できるように今後の専門科目を主体的に学ぶことができる。
授業内容
1. 数理・データサイエンス・AIは、現在進行中の社会変化(第4次産業革命、Society 5.0、データ駆動型社会等)に深く寄与しており、それが自らの生活と密接に結びついている
データサイエンスとはどのような「科学」なのか?を考えるため、経験則の科学、モデルと実験(観測)による科学、計算機シミュレーションに基づく科学、データが駆動する科学のそれぞれの例を太陽系のモデルや宇宙観の発展の歴史を通じて説明する。その際に観測技術の発展、すなわち取得できるデータの質と量の変遷が果たした役割と現象に関する数学モデルが果たす役割を示す。このことを通じて,大量のデータと高性能の計算機による処理がもたらす科学の発展と現代社会におけるデータサイエンスの寄与について学ぶ。
また、Society 5.0が描く社会像をビデオを活用して紹介する。半導体技術の発展がセンシング、通信、計算機の発展をもたらし、大量のデータをサイバー空間で処理することによって、現実社会へ適切な情報がフィードバックされることにより、私たちの生活を豊かにしていくことを述べる。さらに、レコメンデーションやデジタルマーケティングの例をもとにデータ・AI利活用の最新動向を紹介する。
2. 数理・データサイエンス・AIが対象とする「社会で活用されているデータ」や「データの活用領域」は非常に広範囲であって、日常生活や社会の課題を解決する有用なツールになり得る
データサイエンス入門では、また、COVID19を例題に、データ駆動型社会における要素技術としての、調査(検査)やシミュレーションが果たす役割を示す。また、スポーツを題材に、多様なデータ収集や分析が行われていることを紹介するとともに、結果の分析や評価が意思決定につながることを示す。また、ヒューマントリップデータや地元の風力発電所のモニタリングシステムの事例を通じて、データ・AIの活用領域が広範囲に及ぶことに触れ、社会にはさまざまなデータが存在することと身近なマーケティングやレコメンドを題材にデータの利活用されていることを紹介する。
情報リテラシーでは、Web検索などを通じて、社会で活用されているデータとして、どのようなデータがあり、どのように活用されているかについて学ぶとともに、テーマを定めて情報を収集することを学ぶ。
3. 様々なデータ利活用の現場におけるデータ利活用事例が示され、数理・データサイエンス・AIは様々な適用領域(流通、製造、金融、サービス、インフラ、公共、ヘルスケア等)の知見と組み合わせることで価値を創出するものであることを理解する
得られたデータを散布図で表現し、データの傾向や関係性の可視化することを示したのち、機械学習で同定する原因と結果の関係性をグラフとして理解できるように説明を行う。また、順問題・逆問題についても説明する。これらを通じて、データの利活用、AIの応用の目的を類型化して、理解できることを目指している。
調査や観測を補う上での数値シミュレーションの有用性、マーケティング、レコメンドシステム、COVID19対策などを例に、データ利活用の事例をいくつか紹介し、数理モデルの役割も含めて、仮説検証から価値創造へつなげることを述べる。
4. 数理・データサイエンス・AIは万能ではなく、その活用に当たっての様々な留意事項(ELSI、個人情報、データ倫理、AI社会原則等)を考慮し、情報セキュリティや情報漏洩等、データを守る上での留意事項への理解が重要である
情報リテラシーでは、正しく安全に情報を利活用する技術について、包括的に講義する。特に、適切な情報を選択、収集、加工、発信するために考慮すべき点を中心に情報処理・情報通信に関わる法律および、法律でカバーできない部分に対応する情報倫理についての説明を行い、十分な理解を得られるようにする。また、データ・AIを扱う上での留意事項として、情報倫理と情報に関する法律について説明し、データを守る上での留意事項について、プライバシー保護、データ漏えい等への対策も含めて説明を行う。
5. 実データ・実課題(学術データ等を含む)を用いた演習など、社会での実例を題材として、「データを読む、説明する、扱う」といった数理・データサイエンス・AIの基本的な活用法について
統計学では、数量をより分かりやすく理解し、説得力のある説明をするための手段を修得するため、身の回りの数字を読み取り、意思決定に結びつける基礎的方法を学んでいく。3回にわたって記述統計の方法を学ぶことを通じて、データを読むスキルの習得をはかる。
データサイエンス入門では、データの種類(量的変数、質的変数)、観測データに含まれる誤差の扱い、母集団と標本抽出に関するトピックスを中心に、データを読むうえでの基本的な項目を述べる。ヒートマップによる可視化の事例から、データを説明するための気付きが得られる例を与え、説明と表現が不可分であることを学んでいく。
統計学において、Excel を用いた実習を行うことで、データを説明するおよびデータを扱う基本スキルを習得する。
モデルカリキュラムとの対応
数理・データサイエンス教育拠点コンソーシアムのモデルカリキュラム(リテラシ―レベル)と本プログラムの対応は以下のとおりです。
1. 社会におけるデータ・AI利活用
1-1. 社会で起きている変化
社会で起きている変化を知り、数理・データサイエンス・AIを学ぶことの意義を理解する。AIを活用した新しいビジネス/サービスを知る。
実施科目:データサイエンス入門、情報リテラシー
1-2. 社会で活用されているデータ
どんなデータが集められ、どう活用されているかを知る。
実施科目:データサイエンス入門、情報リテラシー
1-3. データ・AI活用領域
さまざまな領域でデータ・AIが活用されていることを知る。
実施科目:データサイエンス入門、情報リテラシー
1-4. データ・AI利活用のための技術
データ・AIを活用するために使われている技術の概要を知る。
実施科目:データサイエンス入門
1-5. データ・AI利活用の現場
データ・AIを活用することによって、どのような価値が生まれているかを知る。
実施科目:データサイエンス入門
1-6. データ・AI利活用の最新動向
データ・AI利活用における最新動向(ビジネスモデル、テクノロジー)を知る。
実施科目:データサイエンス入門、情報リテラシー
2. データリテラシー
2-1. データを読む
データを適切に読み解く力を養う。
実施科目:データサイエンス入門、統計学
2-2. データを説明する
データを適切に説明する力を養う。
実施科目:データサイエンス入門、統計学
2-3. データを扱う
データを扱うための力を養う。
実施科目:データサイエンス入門、統計学
3. データ・AI利活用における留意事項
3-1. データ・AIを扱う上での留意事項
データ・AIを利活用する上で知っておくべきこと
実施科目:情報リテラシー
3-2. データを守る上での留意事項
データ・AIを守る上で知っておくべきこと
実施科目:情報リテラシー